「何であんな歌上手いの? 本当ずるい。腹立つ!」

「ま、でもあいつといても苦しいだけでしょ? 女グセ悪いし。新しい人見つけた方がいいよー」


そして、なぜかウェーブ先輩とミハラさんと一緒に帰る私。

ちなみにクノさんは穂波さんたちとライン交換をしてから、バイト行くと言って先に帰ってしまった。


「間宮さんだっけ? ごめんね、責めるつもりはなかったから。あいつが選んだ女がどんなんか知りたかっただけ。ハッタリだったけど」


ウェーブ先輩はいじけたようにそう言い、私に軽く頭を下げた。


「いえいえ、私もクノさんの嘘に付き合ってしまって、本当すみません!」


どうやらウェーブ先輩は悪い人ではないらしい。

何でクノさんはフったんだろう。

バスに乗る彼女を見送った後、ミハラさんがその答えを教えてくれた。


「浮気がバレて束縛きつくなったから」だと。


うわぁ、クノさんやっぱりめちゃくちゃ最低だ。



ミハラさんとは途中まで同じ道。

お互い自転車を走らせ、川沿いの道を進んだ。


「クノの歌、すごかったでしょ」


土手下の野球場では、少年たちが声を出しながらせわしなく動き回っている。


「はい、上手いなぁって思いました」

「俺ね、あいつとバンドやってたんだよ。知ってる?」


ミハラさんは目を細めながらそう言い、さらっとした髪を夕日になびかせた。


その様子がかっこよくて、まぶしくて。

目を逸らしながら「ドラムでしたよね」と伝えた。


「ええっ? 何で知ってるの?」


キキッ、とミハラさんの方から自転車のブレーキ音がして、私も慌てて自転車を止めた。