初恋エモ


しかし、投票締め切りが迫った九月の終わり。

スクリーミンズから衝撃的な発表があった。


SNSでその情報を知った私は、バイトを終えてすぐクノさんの家へ自転車を走らせた。


「クノさん! どういうことでしょう……!」


『いる』『いない』札を見ないまま、ドアを勢いよく開けた。

ギターを弾いていたクノさんは、振り返り私を見る。


「ライン、見た?」

「え……まだ」


慌ててスマホを取り出す。

透明ガールのグループラインに葉山さんからメッセージが入っていた。


『ごめん。スクリーミンズと心中することにした。透明ガールは脱退させてほしい』


「あ……」


スクリーミンズの全国ライブツアーのセミファイナル、東京の大きなライブハウスにて。

アンコール時に2つの重大発表があった。


スクリーミンズからギターとベースが脱退すること。

そして、バンドが東京に進出すること。


茫然と立ち尽くしていると、クノさんはこう言って笑った。


「葉山さんが選んだんだから、しょーがねーよ」