初恋エモ


「そういえば。ドラムの件、クノはなんて言ってるの?」


ミハラさんからの問いに、私は頭を抱えながらこう答えた。


「サポートのドラムを探そうか迷ってるみたいです。そうすればライブだけはできるんで。でもクノさんに合うドラマーなんてそう簡単に見つからないですよ~」


自身が必死に努力しているからこそ、クノさんの目線は厳しい。

対バンのライブを見ている時も、彼が褒めることはほとんどない。

ストレートに感心していたのは、スクリーミンズと、ツアーで来た他県のインディーズバンドくらいだ。


「そっか……」


ミハラさんは心配そうに私を見つめている。

目が合って、一瞬だけドキッとしたものの、彼の優しさに甘えすぎてはいけない。


「でも立ち止まってるヒマはないです。私は私で頑張りますよ!」


葉山さん不在の分、クノさんの曲ストックはたまっている。

いつでも動き出せるよう、今のうちにベースを特訓しなければ。


「美透ちゃん頑張れ~! あたしも投票頑張る~!」


無邪気にそう言う翠さんの横で、ミハラさんは複雑な表情をしている。

心配かけちゃったかな。なんだか申し訳ない。


大丈夫だ。きっと、何とかなる。そう自分に言い聞かせた。