CDデビューを控えたスクリーミンズは、最近、東京でのライブ回数を増やしている。

MVの再生回数も爆発的に伸びていて、オススメ新人バンドとしてWEBで特集も組まれた。


今となっては、彼らの地元でのライブは貴重だ。


「今日スクリーミンズ、ライブですよね。私、行っていいですか?」


わくわくしながら葉山さんに話しかけると、彼はドラムをセッティングする手をぴたりと止めた。


「……まあ、うん。今はあんまり見せたくないけど……。せっかくだし……うん、おいで」


おや、とてつもなく歯切れの悪い返事だぞ。


「あの、スクリーミンズで何かあったんですか?」

「んー。あんま詳しくは言えないんだけど……」


葉山さんいわく、メンバー同士の雰囲気が最悪とのこと。

活動ペースについていけないメンバーがいて、ボーカルが切れまくりらしい。怖そう。


ただ、バンドの内側がどんな状況であろうとも、スクリーミンズは着実に前へ進み続けている。

もちろん今日のチケットは売り切れ。すごいなぁ。


無料のゲスト枠に入れてくれることになり、クノさんと行くことにした。



透明ガールに一つ問題があるとすれば、葉山さんのスケジュールがきつくなったこと。

ライブの誘いにすぐOKができなくなったり、スタジオ練習の時間が合わなかったり。


でも、今日はスクリーミンズのライブ直前にもかかわらず、葉山さんからスタジオに入ろう、と連絡が来た。

新曲のドラムも必死に練ってくれた。


「クノくん、間奏の終わり、こっちの方がよくない?」

「あ、いいっすね! 次そっちバージョンでお願いします」


なにしろ色んなパターンを試しながら、楽しそうにドラムを叩く。

私たちもアイデアが浮かんでくる。


葉山さんは透明ガールに必要な存在だ。

そして、ドラマーとして熱心にバンドに向き合ってくれるからこそ、文句は言えない。

スクリーミンズの応援もしてあげたい。