電気治療が15分ぐらいで終わると、今度は温かいパットを腰に当てられた。

「熱くないですか? しばらくしてまた来ますね」

 腰がじんわりと温かくなる。気持ちよかった。
 その後名前を呼ばれて、簡易ベッドに案内をされた。横に草瀬さんが立っていた。

「はい、では腰からおしていきますので、うつぶせになってベッドに横になってください。丸いところに顔が来るようにされてくださいね」

 言われたとおりにうつぶせになると、腰を揉まれた。草瀬さんの手はジャージとタオルを通しても温かいのが分かる。セラピストの手はこんな風に温かいのだろうかなんて思った。

「痛くないですか?」
「はい」

 正直気持ちがよかった。腰の下の方から上の方までじっくり揉んでくれる。硬くなっていた腰がほぐされていくのがよく分かった。

「お仕事遅くまでされてるんですね」

 草瀬さんが話しかけてくる。

「最近忙しくて。それで腰痛も悪化したみたいなんです。でも、こちらの整骨院、20時までやってるんですね。ありがたいです」
「そうなんです。うちは結構遅くまでやってますので、腰が痛いときは会社帰りに今日みたいに寄ってください。
うん。だいぶん凝ってますね。ここら辺、痛くないですか?」
「あ、少し痛いです」
「指が入らないので結構凝ってますよ」
「でも、痛気持ちい感じです」

 腰をしばらく揉まれていたのだが、その手が下の方に下がっていき、お尻も揉まれる。さすがにどきりとした。緊張で体に力が入る。

「力抜いて楽にしてくださいね」

 男性にお尻を揉まれることなんてそうない。私はなんだかどきどきしてしまい、そんな自分が恥ずかしかった。

「お尻も硬いですね。筋肉は柔らかい方がいいんですよ」

 足まで揉まれて、その後簡単なストレッチをされた。

「痛くない程度まで曲げます。腰が痛かったら言ってください」

 日頃ストレッチをしていないので、自分の身体が硬いのが分かった。

「はい、今日はこれで終わりです。
そうですね、だいぶん身体が硬くなっているみたいなので、ほぐしていくことが大切ですね。最初はなるべく通える時は来てください。段々柔らかくなったら来る回数を減らせますので」

 私は頷いた。なんだか身体が軽くなった気がする。

「お大事にどうぞ」

 草瀬さんににっこり言われ、整骨院を出た。