しばらく仕事が忙しくて、私は草瀬さんのことを忘れていた。
しかし桜がすっかり葉桜になって季節が進んだ五月、腰が痛いな、とふと思った時に、草瀬さんを思い出し、にこにこ整骨院を訪れることにした。
会社帰りの19時半。もう閉まっているかなと思って行くと、まだ電気が煌々とついていて、整骨院の入り口には午後は20時までだと書いてあるのが見えた。私は少し緊張しながらにこにこ整骨院のドアを開けた。
中は広くて明るく、病院という感じがしなかった。待合室にはおしゃれな椅子がおいてある。私は呼ばれるまで置いてある雑誌を眺めていた。整骨院は初めてだ。どんなことをされるのか、そして草瀬さんは本当にいるのか、ドキドキしていた。
「相葉さーん」
名前を呼ばれ、どきりとして看護師の後についていく。カーテンを引かれた部屋へいざなわれ入ると、草瀬さんがそこにはいた。
「はい、相葉穂花さん」
草瀬さんは私の名前を呼び、にっこり笑った。
「本当に来てくれたんですね」
「はい」
「今日はどんな症状で来られましたか?」
やっぱり声が心地いいなと思う。
「腰が痛くて来ました。仕事の後と、寝るときに痛くて」
「寝るとき、ですか?」
「はい」
「では、後ろを向いてください」
私は言われたとおりに後ろを向いた。
「少し触りますよ」
草瀬さんの手が腰を触る。
「うーん、S字が深いのかな。どちらかというと腰が反ってますね。それで寝るときに痛いのでしょう。はい、前を向いていいですよ」
私は前を向く。すると草瀬さんは全身の骨の模型を取り出し、
「相葉さんの腰骨はですね……」
と説明をしていく。
「ですので、電気治療と施術を今日はしていきますね」
草瀬さんがそういうと、看護師がまたやってきて、ジャージに着替えさせられて、カーテンで仕切られたスペースに案内された。そこには電気治療機だろうものがあった。腰の下の方から上の方まで八つのパットがつけられ、ちょうどいい力の電気を流された。
「終わったら来ますね」
そう言って看護師は去っていった。
しかし桜がすっかり葉桜になって季節が進んだ五月、腰が痛いな、とふと思った時に、草瀬さんを思い出し、にこにこ整骨院を訪れることにした。
会社帰りの19時半。もう閉まっているかなと思って行くと、まだ電気が煌々とついていて、整骨院の入り口には午後は20時までだと書いてあるのが見えた。私は少し緊張しながらにこにこ整骨院のドアを開けた。
中は広くて明るく、病院という感じがしなかった。待合室にはおしゃれな椅子がおいてある。私は呼ばれるまで置いてある雑誌を眺めていた。整骨院は初めてだ。どんなことをされるのか、そして草瀬さんは本当にいるのか、ドキドキしていた。
「相葉さーん」
名前を呼ばれ、どきりとして看護師の後についていく。カーテンを引かれた部屋へいざなわれ入ると、草瀬さんがそこにはいた。
「はい、相葉穂花さん」
草瀬さんは私の名前を呼び、にっこり笑った。
「本当に来てくれたんですね」
「はい」
「今日はどんな症状で来られましたか?」
やっぱり声が心地いいなと思う。
「腰が痛くて来ました。仕事の後と、寝るときに痛くて」
「寝るとき、ですか?」
「はい」
「では、後ろを向いてください」
私は言われたとおりに後ろを向いた。
「少し触りますよ」
草瀬さんの手が腰を触る。
「うーん、S字が深いのかな。どちらかというと腰が反ってますね。それで寝るときに痛いのでしょう。はい、前を向いていいですよ」
私は前を向く。すると草瀬さんは全身の骨の模型を取り出し、
「相葉さんの腰骨はですね……」
と説明をしていく。
「ですので、電気治療と施術を今日はしていきますね」
草瀬さんがそういうと、看護師がまたやってきて、ジャージに着替えさせられて、カーテンで仕切られたスペースに案内された。そこには電気治療機だろうものがあった。腰の下の方から上の方まで八つのパットがつけられ、ちょうどいい力の電気を流された。
「終わったら来ますね」
そう言って看護師は去っていった。