「雨になりましたね」


 その声に私は驚き、振り返った。

「草瀬さん!」
「満開まではまだ早いんですけれど、もしかしたら、来ているかもと思って」

 営業スマイルとは違う、ちょっと恥ずかしそうな笑顔に、私の心はきゅんとなる。草瀬さんの手にもコンビニで買っただろう袋があった。

「雨になったから来ないかと思ってました」
「でも、相葉さんは来られたじゃないですか。一人で待たせていたら、と思うといてもたってもいられなくて来ていました」

 草瀬さんの言葉に胸が熱くなる。

「あの、訊いてもいいですか?」
「何でしょう?」
「どうして一年後にと約束されたのですか?」

 私はずっと思っていた質問をした。

「それは、僕はあの日、相葉さんに救われて、そればかりか好意のようなものを自覚しました。でも、それが本当の好きという気持ちなのか、ちゃんと考えたかったんです」
「そうだったんですね」
「僕はあなたのことが好きです。今日が付き合い始めの記念日ということで大丈夫ですか?」

 草瀬さんは少し緊張した面持ちでそう言った。

「もちろんです!」

 私は笑顔で頷いた。                                                    了