「絶対に悪いと思ってないですよね」

ここは強気で睨んでみると、坂野先輩は『当たり』とでも言うように笑った。


「与倉さんがいて助かったよ」
「…っ、やっぱり!最低ですね」

「向こうの方が浮気してるから最低だと思うけど」
「坂野先輩も同罪です!」

「えー…同罪かぁ」
「恨まれて痛い目に遭いますよ」


一度痛い目に遭うべきではないかとすら考えてしまう。


「痛い目ならすでに遭ってるよ」
「えっ…」

「目の前の女の子が俺に冷たいことばっかり言う」
「……私のことですか」

「すごいね、当たり」
「ふ、ふざけないでください…!」


何が痛い目だ。
この程度で済ませてたまるか。

わざと坂野先輩に背中を向けてやる。
けれどこれが凶と出たようで。


「あ、与倉さんって電車の中でイチャイチャしたい人?」

「……っ!?」


突然後ろから腰に手を回してきたのだ。
満員電車ほど人は埋まっていないため、下手をすればバレてしまう。

いや、電車の中で何をしているのだこの人は。