「今からお楽しみの時間なんで邪魔しないでもらえますか?」

「……え」


突然の坂野先輩の行動に、間抜けな声が出てしまう。

けれど坂野先輩は離れようとしない。


「なになに、隼也が本命?
絶対に嘘だぁ」

「その証拠にもう遊ぶことは卒業しました。
……行こう、与倉さん」

「え、あ…えっ」


肩を抱かれたまま、駅の改札へと歩く坂野先輩。
自然と足が動く。


「ねぇちょっと待ってよ。
中途半端に弄んでおいて逃げるってなんなの!?」

「貴女も本命の相手がいるでしょう。
互いに遊びなんかやめるべきです」


なんか良いように言っているけれど、当の本人は遊ぶことに“飽きた”だけである。

そもそも私は本命の相手なんかじゃないし、ため息レベルだ。


それでも場を乗り切るために黙っていると───


「……はぁ、ごめんね。
面倒なこと巻き込んで」

駅のホームに立った時、まずは謝罪ではなく盛大なため息を吐いた彼。