中学生最後の夏祭り。

 皆んな浴衣を着るというから、私は嫌々お母さんに着せてもらって待ち合わせの場所に行った。

 浴衣が嫌いなわけではない。

 歩く度に乾いた音をたてる下駄を私は恨めしそうに見た。
 流石に浴衣にスニーカーじゃあおかしいもんね。



 私を入れて三人の女子と三人の男子のメンバーで、参道に並ぶ屋台やらを回っていく。
 私は少し離れてついていく。

「遅れんなよ」

 メンバーの一人の男子が私を振り返った。
 そうして、背が私とほとんど変わらない彼は私の隣に並ぶ。

「なんか、今日、少し背、高くないか?」

 言われて心臓をキュッと掴まれたような気がした。

「そ、そうかな? 下駄のせいかも」
「……可愛くねえ」

 ぼそりと言われた言葉が残酷に胸に響く。

 涙が溢れないように夜空を見上げると、星がいつもよりもきらきらして見えた。

「何かあんのか?」

 彼が私の真似をして上を向く。

「お、一番星みっけ」

 私の気持ちなどお構いなしに声を上げる彼。

「おい、願いごとしろよ」
「え? 流れ星にじゃなくて一番星に?」
「いいんだよ、星は星なんだから。こんなに綺麗なんだ。きっと叶えてくれるさ」

 彼の言葉に私は手を合わせる。



 ーーどうか、もう背が伸びませんように。



「何、願った?」
「言わない」
「じゃ、俺も言わない」


「ちょっと、何してんの? 置いてくよ?」

 私の友達が私の手を引く。
 彼女と歩くと、自分の身長が高いのが余計に強調されて、私は切なくなった。

「おい、具合悪いのか?」

 先ほどの男子が私の顔をじっと見つめてきて、私は慌てて笑顔を貼りつかせる。

「何でもないよ?」
「何でもない顔じゃねーよ。
先いけよ、俺、こいつ見とくから」

 私の友達にそう言って、彼は私の腕を掴んだ。
「少し休んで行こう」