「趣味はショッピング。嫌いな食べ物はキノコ類」


声が震えた。


たったこれだけの自己紹介で、心臓が潰れるほどに緊張してしまった。


そして、あたしが答えたのと同時に全員が時計に視線を向けていた。


長針は変わらず5分の場所にある。


5分おきに進む時計なら、もう10分のところにいてもいい時間だった。


しかし、進まない針を確認してあたしは安堵していた。


自分のことを話しても時計の針は進まなかった。


つまりあたしは、犯人じゃない。


今、みんなの頭の中でそう変換されたはずだった。


「進まないな。他になにかないか? 好きな科目とか、嫌いな科目とか」


恵一が更に質問を続ける。


あたしはさっきまでより落ち着いて「好きな科目は現国で、嫌いな科目は数学」

と、答えた。


今度は声も震えなかった。


全員の視線は時計に固定されていたが、針は進まない。