『……こうやって、骨組みをしっかりとして、最後に糸を通すと、ホラ!
 な、やってみ』

 梶山静也は、今は北九州最大の暴走族チーム『北龍』の総長という立場をみじんも感じさせない表情で、小さな子供達に囲まれながら、工作を教えていた。


(つーか、これだけたくさんのお子ちゃまが集まってるのに、親の姿が見当たらないのはどういうことだ?)

 頭の悪い俺でも、何となく何かが違うことに気付いていた。


 俺は外の芝生公園のなだらかな丘を眺めた。


『ひゃっほーい! おっしゃー!!』と、小学校低学年の男の子たちに混ざり、宇野潤が大きなおたけびを上げながら、プラスチック製の草スキーで遊んでいる。

 潤はあまりにもちびっこいので、静也や姫子さんみたく《子供達と遊んでやっている》ではなく、《子供と一緒に遊んでいる》ようにしか見えない。

 実際そうだと思う。


『潤にいちゃんって、何年生?』

『オレっ? オレ、1年だぞ!』

『うっそだー! いくらなんでも、僕と同じ学年じゃないでしょ?』

『そりゃ、そうさ。高校1年生だってば』

『またウソついたー!!』


 そう言って、楽しそうに追いかけっこする。