「姫ーっ! お久しぶりーっ!! 会いたかったよー」

「……亜美ねえ、こないだも会ったばかりでしょ?」

「あれっ? そうだったかなあ?
 まあ、いいや。ようかん食べる?」

「いいえ、要らない。それよりも、もう一人立候補するって本当?」

「あーっ! ゴメン、姫。生徒会長選挙規定なんとかってやつで、正式告示されるまでは、お互いの候補者にも話しちゃダメってことになってるの」


(西村姫子候補予定者は、ほんの少し唇を上げて、薄ら笑いに感じられる表情を浮かべていた。
 塚本さんは、こういう時にも真正直に対応出来るから、本当に凄いと俺は思う)


「会長、別に構わないでしょ。
 どうせ、すぐに知れ渡るし、それにアイツの立候補の動きは、もう学園内でかなり噂になってますよ」

「そうは言っても、ねえ……」


「西村さん、池永隼人って知ってる?」

「ええ、有名な男子生徒ね」

「それは、どういう意味で有名なのかな」

「もちろん、悪い意味で」

「やっぱり」


 そう言って、俺と西村姫子はお互いに小さく笑いあった。