「だいじょうぶ! プライバシーの侵害よりも、報道の自由の方が優先されるのが世の常なのっ!! 分かる?」

「ううん、全然分かんないよ……」

 あたしが心細そうに首を横に振ってる間にも、涼香ちゃんのカメラのファインダーは、応援団の真ん前にいる高校生男子とは思えないくらい、小柄な男の子の団員さんをとらえ、シャッター音がツクツクボウシのオーケストラの中に響き渡っています。

(あたしと同じくらいの身長なのに、あの1年生さんはパワフルだなあ)

 涼香ちゃんの言う通り、確かにどちらかといえば『可愛い』カンジの男の子は、まだ声変わりが完了してない高い声で


「小倉塚第二高等学校ーっ! 応援団イチドーウッ!!
 気合いを込めてーーーっ!! 演舞披露しまーーーーっす!!」

 と絶叫している。すごいなあ~。


「あの1年君、今年の新入部員で、宇野潤(ウノ・ジュン)って言うんだけど、カワイイ系なのに硬派なカンジが女子たちから大人気で、ファンクラブなんかも出来てるんだよ。
 次の校内新聞の『頑張れ!ブカツ男子』のコーナーで、潤君を特集する予定なんだー!!」

 涼香ちゃんは「ギャップ萌えっ///」とか言いつつ、何枚も写真を撮っていきます。