殺人鬼狩りゲーム

2ゲーム



朝の会議が終わり、周りの生徒は肩の力を抜く。


俺は皆にある事を伝えようと思い、教室から出ていく生徒を止めた。
「皆、待ってくれ。皆に伝えたい事がある。」


皆は俺の言葉に反応したのか、自分の席につき始めた。


俺は、榊の立っていてところへ行きある事を話す。
「このゲームは1日に誰か一人を生贄として出さないと、殺人鬼の有利になるんだ。
このゲームは人狼と似ているが、人狼よりも難しい。
例えば、今の状況は殺人鬼が有利だ。朝の会議で生贄を出さないと、夜の会議までの間、殺人鬼は自由に何人もの生徒を殺せる。
殺人鬼を不利にするには朝の会議で死人を出すこと。そういう場合、殺人鬼は夜の会議まで何もする事が出来ないんだ。
死にたくないからって理由で生贄を出さないって事はもうしないでほしい。どうせ殺されるんだよ。それでも朝の会議に生贄を出せば生きる確率が上がる。
君たちはどちらがいいんだ?俺は確率を少しでも上げたいよ。」
俺は誰とも目を離さずに言う。


これは試練なんだ。
生きるためには自分の言葉で誰かを説得しなければいけない。
だから俺は動くよ。


すると伊坂は俺の意見に賛成した。
「俺は八雲の意見に賛成だ。死人を増やしたくはねぇ。それなら一人で十分だろ。残酷だがな。」


皆はコソコソと話しだした。
きっと俺と伊坂の関係が怪しく感じたのだろう。
そりゃあ、そうさ。
昨日に引き続き、今の状況は流石に怪しいだろう。


でも、俺たちは殺人鬼じゃない。


意見を言わないやつは最初の方に殺されやすい。
それなら怪しまれてもいい、爪痕だけでも残して死んだ方がマシだ。



すると榊が俺の前へ来た。
「うん、そんな事分かってるよ。でもさもう変えられないんだよね。次からでもいいかな?それに今言う事じゃないよね?」
榊は俺の耳元で、「時間が惜しいんだよ。」と呟き教室を後にした。


榊に引き続き他の生徒たちも教室から出て行く。
まるで俺の言葉はなかった様に。


これが人間だ。
地位の違いだ。
俺の言ったことが間違ってるとは思わない。
死人を増やさないように言ってやったのに。


皆は、お前らは生きたくないのかよ!!


ははっ、俺が馬鹿だったよ。
俺に味方はいらねぇ、ここに居る全員が敵だよ。


全員死ねば良い。



俺は崩れ落ち、教卓に頭をぶつけた。
それを見た遥輝と伊坂は俺に駆け寄る。


もう、どうでも良い、どうにかなっちまえ。


俺はそう思いながら意識を手放した。





ふと目を開けると、そこは昨日俺が寝ていた教室だった。
「あ、!八雲くん気がついた?」 
俺に声をかけてくれたのは鈴見琴葉(スズミコトハ)だ。
「な、どうして鈴見さんがここに!?」
俺は少し戸惑い、布団で顔を覆った。
すると廊下から聞き慣れた声が聞こえる。
「鈴見さーん、諒起きたぁ?」
遥輝と伊坂は教室に入り、俺の方へ近づいた。
「起きたよ、じゃあ私行くね。」
鈴見さんはにこりと微笑み、教室から出て行った。


「おい諒、さっきの事覚えてるか?お前、倒れたんだぞ?もしや昨日寝れてないだろ。」
遥輝は俺を見透かしたかのように言う。


まぁ、寝てないのは確かだ。
あんな状況で寝れる方がおかしいがな。


「寝れる訳ねぇだろ。あの状況で。」
俺は遥輝に軽くグーパンを入れた。


壁によし掛かっていた伊坂は、急に口を開く。
「お前ら、俺と組まないか?」
伊坂の口からこんな言葉が出てくるなんて思いもしなかった。


「伊坂お前、人間不信だって言ってたよな?」
「あぁ、俺は人間不信だ。でもあいつら特に榊の様子が可笑しすぎる。八雲の発言は間違ってなかった。なのに誰も反応しようとしなかった。可笑しいだろ。あいつらは榊に操られてる気がする。その中でもお前たち二人は榊に操られてないと俺は確信した。
だから、俺たちだけでも生き延びねぇか?」
伊坂は手を前に出す。


春樹は単純な奴なので、「もちろん!」と伊坂の手を握り返した。
でも俺は少しだまり込み脳を正常に働かせる。


俺は、もう誰も信じないと決めた。だがそれじゃあ先に殺されるのは俺だろう。
なら、少しでも信用できる奴がそばに居れば殺人鬼を見つけやすい。
伊坂と協力しよう。


俺は少し遅れて伊坂の手を握った。


「よろしく。」
「あぁ。」
「よろしくな、伊坂、諒!」
遥輝は笑顔で応えた。



さぁ仲間は増えた。



夜が待ち遠しいよ。