2ゲーム



AM9:00
皆は変わらず怯えている。


まぁ、当たり前だよな。
今日で1人殺されるかもしれないんだから。



すると、昨日消えたぱんたくんが突然現れた。
「皆さん、おはようございますでし。今日から本格的にゲームが始動しますでし。覚悟はよろしいでしか?
それでは2日目、ゲーム開始。」
ぱんたくんはタイマーのスイッチを押した。


榊が皆の話を進めようと、黒板の前に立つ。
「それでは、昨日の夜怪しい行動をしてた人は居るかい?」
榊がそう言うと、鴇羽結(トキハユイ)が静かに手を挙げる。
「鴇羽さん、どうぞ。」
榊は鴇羽を当てた。
皆は鴇羽に視線を向ける。


「き、昨日ね、トイレに行ったら、こんな事が壁に書かれてあったの。」
鴇羽はそう言うと、皆にスマホに映っているものを見せた。


そこに書かれてあったのは、「ゼンインシヌ。モウ、タスケハコナイ。」と。


これは女子トイレに書かれていたらしい。
こんな事を書いたのは、紙袋を被った謎の男しかいない。
俺はそう思った。



「これは何かのヒントになるかもしれない。鴇羽さん、その画像消さないでいて欲しい。」
榊がそう言うと、鴇羽はコクンと頷いた。


そろそろ考察時間が終わる。
情報は一向に出てこない。すると榊が口を開いた。
「皆、まだ2日目だけどそろそろ情報があってもいいんじゃないかな?隠してるとかもあるよね?友達だからとか、嫌われたら嫌だとか。……今はもうそんなの関係ないよ。
死にたくないだろう?なら、裏切ってもいい、殺人鬼を殺してこのゲームを終わらせようよ。」
皆は榊の言葉に納得し、頷いた。


今の言葉で榊は白めにみられただろう。だが俺は榊を白としてみられなかった。
あいつは頭が良い、それに隠れプレイボーイ。
頭の良さを利用していい人ぶれるし、委員長という座がある限り殺される確率は低い。それにあいつは女を騙すのが得意だ。だから女子を味方につければより殺人鬼扱いされない。
これがあいつを殺すために破らなければいけない壁だ。
まぁ、あくまでも俺の考察だが。

あいつを殺すには時間が掛かる。それに今、あいつが殺人鬼だと言った所で俺が殺人鬼扱いされてしまう。
しかし、時間を置けば殺人鬼がどんどん仲間を殺して被害者が大量に発生してしまう。

俺は一人で悩んでいた。


ピピピっ。
アラームの音が教室中に響き渡った。
「お時間でし。皆さん、誰を殺しますか?それとも今の時間は殺しませんか?皆さんで決めてくださいでし。」
ぱんたくんはそう言うと、また黙り込んだ。

「今日は、どうしようか。」
榊がそう言うと、波瀬が恐る恐る手を挙げた。
「ねぇ、今日は殺さなくてよくね……?も、もうずっとこのままでいいからさっ!!殺さなくていいじゃん、ね、?」
「おい、お前ビビってんのか。」
伊坂は波瀬に近づく。
「べ、別にビビってねぇーし。ただ、死にたくないんだよ。生きたいんだよ!!」
波瀬がそう強くぶつかると伊坂も負けじと波瀬にぶつかった。
「生きるか死ぬかなんて、誰も分かんねぇだろ!お前一人の判断で誰かが知らないところで殺されたらどうすんだよ!お前だけ生きたいなんて思ったら大間違いだぞ。皆生きて帰りたいんだよ!それに、このゲームは死人が出ない事なんて絶対無いんだ。何人かは犠牲にならないといけない。だからお前も死ぬかもしれねぇ、ここで人質を出しとけば、一人しか犠牲者が出ないんだ。」

伊坂の言う通り、話し合いで誰かを生贄にすれば殺人鬼はその後動く事が不可能になる。だから殺人鬼にとったら、あまり生贄を出してほしくないのだ。
生贄を出さなかった場合殺人鬼は好きなように、好きな時間帯に動く事が出来る。
なので、今の発言を聞く限り波瀬が黒に近い。
しかし波瀬のあの発言は嘘偽りなかった。ただ頭が混乱して、自分が死にたくないが為に発言したとしか考えられない。


「それじゃあ、朝は生贄を出さないでおこう。ただし夜に必ず生贄を出す事にする。皆分かったね?」
榊はそう言い、皆と目を合わせた。


こういう場合、夜の会議までの間殺人鬼は自由に殺せる。しかし皆の目を盗んで殺さなければならないのでリスクは大きい。見つかった場合、俺達一般の生徒に殺される。
なので殺人鬼は中々殺す事が出来ない。


「お前、正気か……?」
伊坂は榊の胸ぐらを掴む。
「あぁ、正気さ。俺は波瀬さんの意見と君の意見を交えた結果を出したんだが、何か不満があるのかい?」
榊は少し煽るように言った。


すると、榎本雅(エモトマサ)が二人を止めに入った。
「ねぇ、もういい加減にしろよ。もう時間無いんだけど。」
榎本はそう言うと時計を指した。
伊坂は榊を乱暴に突き放し自分の席へ戻る。榎本も続いて自分の席へ戻って行った。


「すまない、取り乱してしまった。まぁ、各々色んな考えがあると思うが、さっきの結論でいかせてもらうよ。」
榊はそう言うと、ぱんたくんに話しかけた。
「分かりましたでし。それではこれから自由時間でし。PM7:00までには、この教室に居て下さいね。」
ぱんたくんはそう言い残し、消えてしまった。





朝の会議終了。