1ゲーム



今はまだPM3:00。このゲームは12:00きっかりに始まったらしい。
そして1ゲーム目まで残り4時間もある。


周りを見渡しても、友達同士で励まし合ってる女子やスマホを弄りまくってるやつが多数、この状況で平然としていられてるやつ俺を含め数名。
この中に殺人鬼が居るのに互いを励まし合ってる姿が馬鹿に思えてきた。


クラスのムードメーカー的存在の藍川智樹(アイカワトモキ)が場の雰囲気を明るくしようと席から立ち上がった。
「皆、大丈夫だって!そう暗い顔すんなよ!な?こんなのただのお遊びだろ?」
藍川がそう言うと壁から一本のナイフが飛び出してきた。
伊坂は気配を感じ取り、藍川を突き飛ばした。交わされたナイフは黒板に突き刺さっていた。
「危ねぇ!!」
「ッ!!」
「藍川くん、大丈夫!?」
もう一人の委員長、野風菜月(ノカゼナツキ)が藍川に近寄る。
藍川は少し擦り傷を被った。


伊坂は黒板に突き刺さっていたナイフを手に取り、ナイフが飛び出てきた壁を見つめている。


するとテレビに光がつき、また紙袋を被った謎の男が出てきた。
「藍川様、貴方先程、このゲームを馬鹿にするような発言をいたしましたよね?」
謎の男は藍川に向かって喋っている。
「あぁ、言ったさ。」
「今すぐその言葉を取り消して下さいませ。さもなければ、……貴方を地獄送りにいたしますよ?」
謎の男は藍川を脅した。
「わ、わかったよ!取り消すから!!」
流石に怖くなったのか、藍川の声は震えている。
「いいでしょう、……一つ皆様に忠告しておきたい事があります。このゲームを馬鹿にするような発言を今後一切しないで頂きたい。そのような発言を一つでもすると、貴方たちの命はないと思ってもらっていいでしょう。
それではあと3時間、お待ちしててください。」
謎の男が言い終わると同士にテレビの電気が切れた。



俺は、やはりGPSが埋められていると予想した。
カメラでは、誰が言ったか判断が難しい。しかしGPSなら、誰が言った察知出来る。

皆はこのゲームに支配されていると感じた。


このままでは生き残るのは確率が低すぎる。
最低一人、一人だけでも殺人鬼を見つけて殺さなければ。
そして、仲間を作らなければ。


このゲームには勝てない。





PM7:00
恐怖の一日目が終わろうとしている。
ここで殺人鬼を見つけるのは難しい。だからこの一日目は皆の様子を伺う事に決めた。

ゲームの進行は机の上に置いてあるパンダのぬいぐるみ。
このパンダ、時間になると喋り始める不思議なぬいぐるみなのだ。
「やぁ、皆さん。このゲームの進行役をいたします、パンダのぱんたくんでし。よろしくでし。さて皆さん、このゲームのルールはご存知だと思いますが、軽く流れを説明いたしますでし。まず最初の10分間は情報交換、〇〇がこんな動きをしてた。などと証拠を発言する時間でし。そしてその情報を元に殺人鬼を絞り込む。こういう流れになっているでし。しかし、今日はまだ初日と言う事もあり、被害者は出さないでし、殺人鬼も殺す事が不可能でし。まぁそういう事なので、明日から頑張ってくださいでし。」
パンダのぬいぐるみのぱんたくんはそう言うと一度話を止めた。


ここからは委員長である榊が話を進めた。
「今日は被害者が出ないという事で安心してるかと思うが、ここで殺人鬼を絞らないと明日以降がキツいと思う。なので、今から各自違和感があった行動をしてた人の名前を上げてってくれ。」
榊がそう言うと皆は互いの顔色をうかがいすぎて、誰も発言しそうになかった。


俺は誰も手を挙げない中で一人だけ挙げる。
「八雲、どーぞ。」
榊が俺の事を当ててくれた。
俺は一人で立ち上がり皆の方に向かって話し始めた。
「俺は、伊坂は殺人鬼じゃないと思ってる。」
俺の言葉に皆どよめきを隠せずにいる。
榊が、「なんでかな?理由を聞きたい。」と真剣な顔をして俺に問う。
「伊坂は、ゲームが始まったとき教室から出ようとした。だけど開かないことが分かったとき扉を蹴っただろう?あの時、もしも伊坂が殺人鬼だったら教室の扉が閉まることぐらい把握してたはずだ。それに証拠は他にも色々ある。腕時計にGPSが仕込まれてないか?と聞いた時も、藍川を助けた時だって、全部皆の事を考えて動いてたんじゃないのか?皆はそう思わないかも知れないけど、俺はそう思うよ。」
俺はそう言い残し、席についた。



伊坂は少し驚いた様子で俺の事を見つめている。
その視線が少し照れくさい。
俺は伊坂と目を合わすことなく、1日目を終えた。




1日目のゲームが終了したと同時にぱんたくんが皆に向かって話し始めた。
「ゲーム終了でし。それでは皆さんは、ポケットに入っている紙を取り出して下さい。そこに書かれている教室が皆さんの過ごす部屋となっておりますでし。教室の鍵はもう開いてあります。
良い夜をお過ごし下さいませでし。」
ぱんたくんはそう言うと姿を消した。まるで幽霊のように。


榊は扉が開いている事を確認し、皆を誘導した。
俺は皆のあとに続いて自分が過ごす教室に移動しようとしたが伊坂に呼び止められた。
「おい、八雲。」
「な、何?」
俺はくるッと伊坂の方を振り向く。
声のトーンが少し低く感じた俺は少しビビりながら伊坂と目を合わせた。
「お前、何もんだ?」

伊坂は俺を疑っているのだろうか。確かに、初日で発言したのはまずかったかも知れないけど、別に俺は伊坂に信用してもらいたかった訳ではない。
「何者か、俺はただの生徒だ。俺は伊坂に信用してもらいたかった訳じゃない。ただ、一人でも普通の生徒を見つけ出したかっただけだよ。」
俺は真っ直ぐ伊坂の目を見つめた。

例え、信じてもらえなくても、俺は自分を信じる。
伊坂を、信じる。



「信用してもらえて嬉しいけどよ、生憎俺は、人間不信なんだ。だからお前も俺の事信用しない方が見の為だぜ。」
伊坂はそう言うと、俺の横を通り過ぎ教室から出て行った。



伊坂も俺も榊が扉越しに俺達の話を聞いていた事を知る由もなく、一日が過ぎた。