「ねぇ、知ってる?最近色んな学校で殺人事件が多発してるんだよ。」
「何それ、ウケる(笑)」
ある事件を馬鹿にしているのはクラスのお嬢様キャラ、恋口姫(コイグチヒメ)。
恋口は笑っているが、本当は笑い事ではない。
この事件は普通ではないのだ。
この事件が起きるのは高校。まだ未来がある学生をターゲットにしている。
そして一番危険なのはまだ犯人が分かっていない事だ。
なぜなら犯人は誰も殺していない。
生徒が自ら仲間を殺しているから。そしてその生徒も自分で自分を刺し自殺しているのだ。
だから事情聴取なども出来ぬまま、何度も同じ事件が繰り返されている。
俺、八雲諒(ヤグモリョウ)はお嬢様の話を耳に入れながら窓の外を眺めた。
あんな事件が無ければ俺の幼馴染は死んでなかったのにな……。

そうだ、俺の幼馴染である斗南咲(トナミサキ)はこの事件がきっかけで亡くなった。
彼女は殺人鬼だったらしい。生き残るために、何人もの仲間を殺して嘘をついてきた。

一応殺人鬼の勝利になったらしいが、背負わないといけないものが多過ぎて、自ら命を断った。

最後に彼女は俺にこんな言葉を残した。
『諒は死なないでね?私の分まで生きて、例えあの事件に巻き込まれようとも……。』
そう書かれてあったのだ。
だから俺はアイツの分まで生きなければいけない。


でもまぁ、この学校が狙われることなんてそうそうない。


あの事件は都会の高校に狙いを定めている。だからこんな都会から外れた高校なんか狙われるわけがない。


そう思った。


「よっ!諒!」
俺に声をかけたのは、中学のときから仲がいい木下遥輝(キノシタハルキ)。


「なぁ、諒。殺人鬼狩りゲームって知ってるか?」
「あぁ、もちろん。最近じゃ有名な話だろう?」

俺は誰にも咲の事を話していない。
遥輝も咲の事をよく知っているが死んだという事は知らないらしい。
だから噂話程度に言ってくるのだ。


すると突然教室の扉が閉まった。
ピシャッ!!
もの凄い音がしたので皆は少し固まっている。
俺は嫌な予感がした。


咲が亡くなる前少し殺人鬼狩りゲームの内容を教えてもらった。
殺人鬼狩りゲームの始まりは教室の扉が急に閉まるという。


俺はもしかしたら……。と思い顔を青ざめる。
「う、嘘、だよな……?」
俺は顔を引きつりながら問いかける。遥輝は俺の顔を見ると少し顔色を変えて不安そうにした。
「な、なんだよ、急に……。」
「殺人鬼狩りゲームが、始まっちまう……。」


諒の言葉と同時に教室の上からテレビが降りてきた。
そこに映し出されていたのは、謎の紙袋を被った人間だった。


皆は恐怖のあまり自分の席へ戻り、固まっている。
きっと未だに状況が整理できていないんだろう。
しかし諒だけはこのゲームの本当の怖さを知っている。


紙袋を被った謎の男はマイクを手に取り話し始めた。
「ミナサン、『殺人鬼狩りゲーム』ノ、ハジマリデス。」

クラスの皆は紙袋を被った謎の男の言葉を聞き、泣き叫んだ。
皆、このゲームを知っている。だから尚更怖くて仕方ないのだ。
「殺人鬼狩りゲーム」という言葉を聞かない筈がない。

諒は皆より先に冷静になろうとしたがやはり、皆の泣き叫ぶ声が諒をそうさせてはくれない。
諒も恐怖を感じた。


「ミナサンニ、ゲームのルールを説明いたしましょう。まず、この中に殺人鬼が4人ほど潜んでいます。残る生徒はみな仲間です。しかし仲間だと言いましても、誰が殺人鬼だか分かりません。なので皆さんは殺人鬼を見つけ出してください。それが生徒のクリア条件です。
ついでに殺人鬼のクリア条件を説明しますと、殺人鬼以外の生徒を全員殺す事です。分かりましたね?
それでは楽しい、楽しい、殺人鬼狩りゲームを……


始めましょう。」
プツッとテレビの電源が切れたしかしまだ説明は終わってない。
紙袋を被った謎の男は皆の様子を隠しカメラで見張ってる。皆の行動次第でまたあいつは現れるだろう。


少し不良っぽい伊坂大和(イサカヤマト)が教室の扉を力ずくで開けようとする。
しかし、扉はびくともしない。
「くそっ!開かねぇ、何なんだよっ!!」
伊坂は教室の扉を強く蹴り、怒りをぶつけた。


ギャルみたいな口調の波瀬瑠華(ハセルカ)がスマホをいじり警察に電話を掛けていたが一向に繋がらない。
「はぁ!?マジなんなの!?繋がんねぇーし!」
波瀬はイライラし、机に突っ伏した。

俺は窓の外を見ると時が止まってるみたいに、外の景色が何も変わらない。
校庭を歩いてる人も全員一時停止したように全く動かないままだ。
この状況は俺達のクラスが標的なんだと確信した。


するとまたテレビに光がついた。
そして紙袋を被った謎の男が俺達にこのゲームの流れ説明し始めた。
「このゲームはみなさんも知ってるかと思います、人狼ゲームといったものと同じシステムになっております。先程、八雲様が見つけた時間が止まっているという事を説明いたしますと、外は時を止めております。この空間だけ、普通通り進んでいます。なのでこの腕時計を必ず全員装着することをオススメします。この時間通りにゲームが進むので、話し合いのとき居なかった場合、その方は強制退場。死にます。
それが嫌なら必ず腕時計をすることですね。

まぁ、話がズレましたが、殺人鬼狩りゲームの流れを説明しますね。まず、一日2回殺人鬼追放会議及び予想を皆さんで話し合ってください。時間は1回目AM9時〜、2回目はPM7時〜です。追放会議で誰かを追放出来るのは10回までになります。10回使い切るまで殺人鬼を見つけられなかった場合、生徒側は最悪の状態へ陥ります。しかし、この時の女神という職業が生き残っていれば、チャンスはあるはずです。
人狼同様、殺人鬼狩りゲームには職業というものがあります。まず、最初に言った女神という職業。そして占い師、裏切り者、ピエロという職業があります。まず女神の説明をします。女神とは、10回追放しても殺人鬼が残っていた場合発動します。女神はその時、誰が殺人鬼か一人だけ分かることができます。そしてその殺人鬼を殺せるのです。しかし、代償が大きい、その代償とは、自分の命を引き換えにすること。なので女神という役職は重大な職業です。
次に占い師、占い師は女神と同様に誰か一人を占える事ができます。しかし、殺人鬼とは限らない。殺人鬼だとしても、誰にもその情報を共有する事が出来ないので自力で殺すしかありません。感の良い殺人鬼だと占い師は殺されるかもですね。
続いて裏切り者、裏切り者とは殺人鬼の仲間に値する役職です。裏切り者ものは占い師などと嘘の発言をする事が可能になります。その場合占い師が不利になるのと、一般の生徒が混乱します。殺人鬼からしても混乱しますがね。しかし裏切り者は爆薬を所持しているので人殺しも可能。しかし爆薬は2つしか持っていないので、殺人鬼の目の前で誰かを殺せばあなたは生き延びられるはずです。 
最後にピエロ、ピエロとは普通の生徒なのですが、自分が殺されそうになったとき、誰かを身代わりにする事ができます。しかし効果は1回まで。これ以上ピエロという役職を使うと自爆する恐れがあるのでお気をつけよ。
ゲームの流れは以上になります。それでは皆さん腰についている物を確認してください。はいそうです。ナイフです。これで殺人鬼以外の生徒でも殺人鬼を殺す事が出来ます。



あ、一ついい忘れていましたね。
殺人鬼は夜に一人殺す事ができます。スマホで誰を殺すか投票して決めます。そして私達の方で殺すのでご安心を。


以上になります。皆さん意見はありませんね?




それではゲームSTART。」
プツッ
またテレビの電気が切れた。今から本格的にこの地獄のようなゲームが始まるんだと、クラスの全員が思った。
女子たちは帰りたい、などと言い泣いている。泣いていても何も変わらない。それなら殺人鬼を見つけて殺そうよ。と思う。
すると委員長である、榊航輔(サカキコウスケ)が立ち上がり、クラスの皆と向き合った。
「もう、どうしようも出来ないんだ。泣いていたって何も変わらないだろう?それならいっそ殺人鬼を殺してここから一秒でも早く出ようよ。」
榊はそう言うと皆ににこりと笑みを向けた。この笑顔は本当の笑みなのか偽りの笑みなのか、俺は榊を疑った。
しかし、そんな事言ったって意味がない。証拠がないんだ。
下手に手を出したら危険だ。

俺はそう思いながら榊を見つめた。



榊は皆に腕時計を配る。皆は恐怖のあまり何も考えずにつけていたが、俺は少し違和感を感じた。


この時計、GPSでも埋め込まれてるんじゃねぇか?逃げないように。逃げたらすぐわかるように。説明が上手いなぁ、あの紙袋野郎。


俺と同じく時計に違和感を感じたやつがもう一人。
伊坂だ。
「こいつにGPSとか埋め込まれてないよなぁ?」


皆は一斉に伊坂の方を向いた。
しかしもう皆は腕に時計がついていた。
陰が薄いタイプの松江章人(マツエアキト)が少し顔を青ざめながら、
「そんな事言うなよぉ……。」
といい泣きそうになっていた。


皆はまだこのゲームの恐ろしさを知らない。



さぁ、ここからが本番だ。




ゲームSTART