桃瀬が通っているらしい
 中学の前についた。


 本当に学校に来ているのか?

 ブルーの髪をした桃瀬は。


 門の前で待ち伏せをしようと
 思っていたけど
 何時に桃瀬が
 門から出てくるかわからない。


 ましてや
 学校に真面目に登校しているのかも
 怪しい。


 俺は
 中学の門が見えるカフェに入り
 極甘なミルクティーをすすりながら
 桃瀬を待つことにした。


 カバンに入れてあった
 刺繍の本を読み続けること50分。


 ぞろぞろと
 校門から生徒たちが出てきた。


 絶対に見逃さないように
 スナイパーになったつもりで
 門から出る生徒を一人ひとり確認。


 その時


『あいつ、
 おいしそうな髪色してんじゃん』


 俺の瞳が捉えたのは
 かき氷の上にかかったブルーハワイみたいな
 爽やかな水色の髪をした男子。


 遠すぎて
 どんな顔をしているかはわからない。


 でも水色の髪が太陽で煌めいていて
 その宝石みたいな綺麗さに
 俺は目を奪われたまま固まってしまった。


 あいつが俺の探していた
 『桃瀬 十環』だって頭が理解したのは
 帰りの中学生たちの波に紛れて
 ブルーハワイの色を見失った時。


 会うのが怖いと思っていたのに
 知らぬ間に芽生えた好奇心。


『ブルーハワイの髪色が
 似合う奴なんてこの世にいるのかよ。

 近くでどんな顔か見てみたいじゃねえか!』


 俺は心の中で
 フフフと笑いながらそうつぶやくと
 冷めきったミルクティーを一気に飲み干し
 急いでカフェを飛び出した。