千夏は時間を潰そうとコンビニへ入り、書籍コーナーで雑誌を見ていると、視線を感じ頭を上げるとガラス越しに千夏をじっと見てる男がいた。
(…ッ⁉︎…ビックリした…
なんかきみが悪い…もう出よう…)
コンビニから出ると、背後から『朱音さん?差桜良朱音さんですよね?』と声がした。勿論、千夏は自分を呼んだのではない事は分かっていた。
だが、千夏は聞き覚えのある名前に立ち止まり振り向くと、見知らぬ男達に囲まれ両腕を抱えられた。
(え⁉︎ ナニこの人達⁉︎)
「⁉︎ っな…何するのよ!離して‼︎」
なんとか逃げようと暴れる千夏の前に、黒塗りの車が停車し後部座席のドアが開いた。
(え⁉︎私連れ去られるの⁉︎…うそ…マジで⁉︎)
千夏は、恐怖を感じはしたが人違いであるのは事実の為、男達に慌てて人違いだと訴え叫んだ。
「ちょ、ちょっと!人違い!人違いだって‼︎」
千夏の訴えなど聞き入れようとしない男達は力尽くで千夏を車の中へ押し込もうとした。
だがその時、首に掛けていた千夏の社員証が男達の目に入ったらしく、男達は人違いだと分かり千夏を解放し立ち去った。
ただ、その時男達と後部座席に居た男とのやり取りが千夏は気になっていた。
『おい、どう言う事だ⁉︎』
『すいません!
間違いました…
でも、一緒にマンションから出て来たので…』
『余計な危険は避けたい。離してやれ!』
後部座席に居た男の一言が無ければ、ひょっとしたら無事に済まなかったかも知れないと思うと、今になって千夏は怖くなっていた。
「…以前、チー…社長のところへ訪ねて来られた方も確か差桜良朱音さんって名前でしたよね?
もしかしたら…」と、千夏が話した時、エレベーターはちょうど最上へ到着したと、軽快な音で知らせた。
「うさぎは、先に代々木代の部屋に行っててくれ!
一本電話したら俺も直ぐにいく!」
木ノ下は、再び千夏にスマホを借りると、慌てた様子で何処かに電話を掛け始めた。
「あ!
俺だけど?…馬鹿俺だ!……春樹だ!
俺の声くらい覚えとけ!…あ⁉︎
ちょっと会社の社員のを借りてるだけだ。
それより、朱音ちゃんに危険が迫ってるかもしれないんだ。直ぐに朱音ちゃんの居処を確認して、保護しといてくれ!」
(なによ…朱音ちゃんって…
彼女なんて居ないって言ったくせに…
居るじゃん!
血相を変えて心配する相手がさ!)
一度は副社長室へ向かいかけた千夏だが、木ノ下の様子が気になった千夏は、廊下の曲がり角で聞き耳をたてていたのだ。
そして、木ノ下は「詳しい事は後で話す」と言って電話を切った。

