水曜日になって

「何か、3組の女子揉めてるらしいよ」


さっちゃんがお弁当を、広げながら続けた。

「部活一緒の子が言ってた」

「それって……」


教室を見回して…
いや、横を確認して、ふっちーがいないのが分かると


「この前の、グループだったりして」
そう言った。



その時、ガラッと勢いよく教室のドアが開いて顔を出したのは……


斉藤さんだ。


噂をすれば………


バチッと目が合うと、ツカツカと私の所へやって来た。

手には…マグとお弁当。


横の椅子を持つと私とさっちゃんの席に座った。



「今日、お弁当一緒にいい?」


「あ、うん。えっと、こちら、さっちゃん」


「どうも」

さっちゃんが挨拶をする。


「こちらが……」

「斉藤睦美です。むっちゃんって呼んで」


斉藤さんが自分でそう言った。


「むっちゃん、どうしたの?」

さっちゃんの順応性にビックリしながらも、聞かなくてはならなかった。


だけど、その前に…


「ねぇ、むっちゃん、その椅子、ふっちーのだよ?」


「わぁ!違うの!知らなかったの!」

今日もむっちゃんは言い訳から始めた。


無難な前の席から椅子を借りると、斉藤さん…改め、むっちゃんは話し出した。



「月曜日に、ちぃこに話したの。じゃあ泣いちゃって…で、何で今更!とか、振られたからって!とか…色々言われて…自覚が遅かったって説明したんだけど…聞いてもらえなくて……昨日1日我慢したんだけど、堪えられなくて………」


「あー、お昼ご飯くらい美味しく食べたいよね。何か、同意してくれる子は居なかったの?」


「いたけど、とりあえずちぃこが泣いたから、誰も何も言えなくなって……」


「何だろう、なんだかねぇ…」


「暫く、ここで食べてもいい?」


「あー、いいよ、おいで」


そう言うと、むっちゃんは笑ったけど…

直ぐに信じられないくらい赤くなったので


ふっちーが教室に入って来たことが分かった。


「それじゃあ、言わなくても、どのみちバレたよね。自分の口で言っただけでもエライと思うけど。だいたい、先着順でもないじゃんね」


さっちゃんがそう言って、私も頷いた。



ドカッと、席についたふっちーが


「誰?」


「ん?3組のむっちゃん」


「へぇ、宜しくむっちゃん」


「あ、宜しく、ふ、ふっちー」

と、むっちゃんが赤いながらもそう返した。


「ねぇ、ここへ来たのってさぁ……」

「ち、違う!たまたま、たまたまだから!」


むっちゃんが乙女の顔でそう言った。