君がかわいいと言うから

その後、無心で食べていたら昼休みが終わってしまった。

午後は普通に授業を受けて放課後になったら学校をすぐ出た。

部活に所属していない私は、いつも行きつけの喫茶店で勉強してから帰ることにしている。

季節は夏、じわじわと照り付ける日差しが熱い。



「ぷはあ、すっずし~!」

「いらっしゃい風夏ちゃん」



行きつけの喫茶店『エスターテ』に入ると、マスターの陽太(ようた)さんが迎えてくれた。

マスターは今年で55歳の渋いおじさま。

サイドを刈り上げたオールバックの髪に、きりっとした太い眉。

でも見かけによらず優しくてわたしは幼いころからこの喫茶店に通っている。



「キャラメルマキアートください!」

「はい、いつものね。少々お待ちください」



こうしてキャラメルマキアート片手に夜遅くまで勉強する。途中でお腹が空いちゃったらサンドイッチを頼むこともしばしば。

両親は共働きで帰ってくるのが遅いから、だいたい週3くらいここでご飯を食べてる。

この日は居心地が良すぎて長居してしまった。