夜になり。

 悠里は今まで住んでいた家で、最後の夜を過ごしていた。

 一樹も来てくれて、ゆっくりとした時間を過ごし、今ままであったことを色々話していた。


 そして


「伯父様に、私が結婚して嫁いでいくことは困ると言われたの…」

「え? 」


「養女に来てくれたのに、嫁いでいかれたら跡取りがいなくなってしまうって言われて…」

「なんだ。それなら、別に構わないじゃないか。俺が、末森家に養子に行けばいいんだから」


「養子に? 」

「ああ、俺はもともと家を継ぐ気はないし。会社も、弟が継ぐことになっているし。俺が養子に言っても、問題ないから」


「いいんですか? 本当に」

「ああ、俺がいない方がきっと平和だ」


 笑っている一樹だが、どこか悲しそうな目をしているのを悠は感じた。


「とにかく心配する事はない。2人も男がいるんだから、1人くらい養子に行っても構わないさ」

「…そうですか。…じゃあ、ちゃんと貴女のご両親にもご挨拶させて下さい」

「そうだな、まだ父さんには会わせていなかったな。今度の休みにでも、時間作ってもらうよ」

「はい…」


 ピカッ…

 何かが光るのが見えた。


「あ、水晶が光っているわ」


 寝室から水晶を持ってきた悠は、そっと手をかざした。


「ユウリ…」


 ナーディの声が聞こえてきた。


「お母様。…今、連絡しようとしていたのよ」

「そうでしたか。なんとなく、今なら貴女の選んだ彼に会えるような気がして連絡しました」


 水晶を通してナーディの姿が現れ、一樹はちょっとかしこまって頭を下げた。


「は、初めまして。宗田一樹と申します」


 ナーディは一樹にそっと微笑んだ。


「初めまして、ユウリの母ナーディです。娘が大変お世話になって、なんとお礼を言ったらいいのか…」

「いえ、お礼なんていいです。悠里さんと出会えて、俺はすごく幸せになれましたので」

「ユウリをよろしくお願いいたしますね」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。幸せにしますので、ご安心下さい」


 ナーディはそっと微笑んだ。