「なんだ、やっと話してくれたんだ」

「大丈夫ですよ、みんな本当は気づいていましたから」


 男性社員からの優しい言葉に、悠は驚いて、ゆっくりと顔を上げた。


 みんなどんな顔をしているのかと思ったが。

 とっても優しい笑顔で見ていてくれた。


 その笑顔に、悠はホッとした。


「末森さんが男性だなんて、思えなくて」

「そうだよね、とっても綺麗だし。見ているだけでキュンとなったし」

「男装しているのって、モテすぎて困っているからかな? って思ってたから」

「まぁ、初めはそうかも? って信じたけど」


 悠の傍に美恵がやって来た。


「悠君…。ううん、悠ちゃん。みんな、知ってても知らないふりして。ずっと、見守っていてくれてたのよ。私は、所長にそれとなく聞いたけどね。でも、違うって言われるし。人には言えない事もあるから、きっといつか話してくれるんじゃないかって信じていたの。よかった、ちゃんと聞けて」

「美恵さん。…有難うございます…」


「今の悠ちゃんのほうが、とっても素直で素敵。…所長が好きになる気持ち、とってもわかるわ」

「え? そ、そんな事は…」

「隠さなくてもいいじゃない。みーんな知っているのよ、言わないだけでねっ」

「そ、そんな…」


 赤くなってしまう悠を、よしよし、と美恵は慰めた。


「でも寂しくなるわね。悠ちゃんがいなくなると」

「…すみません…」

「謝ることはないわ。悠ちゃんが、幸せになる事が1番だから。でも、時々遊びに来てね。ここに居る男連中、みーんな悠ちゃんのファンだから。寂しがるもの」

「はい…」


 思っていたより、みんな優しい人ばかりだった。

 知っていても知らないふりをして。

 本当の事を話しても誰も責めたりしない。

 見守って、いつか本当の事を話してくれると信じてくれていた。



 天空界では人間は悪いぞ存在と言われていたが。
 それは天使の思い込みで、実は、人間のほうが深い愛に包まれているのではないかと、悠は思った。