悠は病室に運ばれた。

 今はちょっと穏やかな表情になり眠っている悠。

 そんな悠を一樹はそっと見ている。


「ばーか。無理ばかりしやがって…」


 そっと悠の頭を撫で、愛しい目で見ている一樹。


「よかったな、元気になってきて」


 悠の寝顔を見て、一樹はそっと微笑んだ。



 
 少しして悠が目を覚ました。


 ぼんやりとして見える景色に、病院にいることが解りハッとして起き上がった。


「あ、大丈夫か? 」

 傍で優しい一樹の声が聞こえて、ゆっくり振り向いた悠は涙ぐんだ目をしていた。


「どうかしたのか? 」

 
 そっと首を振る悠だが、潤んだ目から涙が溢れてきた。


 一樹はそっと悠を抱きしめた。


「何かあったのか? 」

  
 聞かれても悠は何も答えなかった。

 答えたくても言葉にならなくて…。

 声を殺して泣いていた。


「もういい、話せるようになったら聞くから。しばらくゆっくりしろ。頑張りすぎているんだ、お前は」


 優しく背中をさすってくれる一樹を感じて、悠はちょっと安心した気持ちになれた。





 目が覚めたら帰ってもいいと言われて、悠は一樹と一緒に帰る事にした。


 

 車の中。

 悠は何も喋ろうとしない。

 一樹も無理に会話を作ろうとしなかった。