「一樹おじちゃん、照れてたみたいだね」


 幸喜が言った。

「パパ、大丈夫だよ。もうすぐ、一樹おじちゃんが素敵な天使さんを連れて来るよ」

「天使を? 」

「うん。一樹おじちゃんは、天使さんに恋しているもん」


 天使に恋している。

 幸喜が言うことが、なんとなく夏樹にも理解できた。

 イカツイ表情で俺様だった一樹だが、優しい表情をしていた。

 何かが一樹の中で変わっていることを夏樹は感じた。






 

  真夜中の病院。

 個室の病室で、樹利亜が眠っている。

 高熱で苦しそうな樹利亜の表情。



 眠っている樹利亜の元にスーッと綺麗な光が優しく差してきた。


 その光から、細くて綺麗な手が差し伸べられ、樹利亜の額に触れた。

「…もう大丈夫…楽になりますからね…」

 優しい声が聞こえた。



 光が樹利亜を覆うと、苦しい表情だった樹利亜がだんだんと和らいだ表情へと変わってゆく…。


 

 光が収まって来ると。

 樹利亜の傍には、一樹が公園で会った女性が立っていた。

「…良かった。もう大丈夫ね…」

 床頭台の上にある水差しに、女性はそっと触れた。

 水差しの水が優しく光った。

「お元気で…」

 それだけ言うと女性はフッと消えた。



 女性が消えて少しして樹利亜が目を覚ました。

 ぼんやりとした目で天井を見ている樹利亜は、そっと微笑んだ。

「有難う…天使さん…」

 とても嬉しそうに微笑んで、樹利亜は再び眠りについた。