「じゃあ、私は帰るから」



「家まで送ろうか?」



心配そうな顔をしている成海くんを見て、他の女子にもそんなふうな扱いをしているのかななんで思った。



誰にでも優しくて、発言力もあって、みんなからキャーキャー言われていて。



そんな人なら私のこと、好きにならないよね?



大丈夫だよね?もう、私のことを傷つける人は現れないよね?



一瞬心を開いてしまいIDを教えてしまったけれど、初カレとの過去を思い出して、今さら後悔しそうになる。



大丈夫、自分のことはもう自分で守れるから。



「大丈夫。じゃあね」



「おう、また明日な!」



また明日、か。



「約束、忘れないでよ」



「……あっ、いや、覚えてたよもちろん!」



あははと笑ってごまかす彼を見て、ちょっと私と似ているなぁなんて思ってしまった。



彼が約束を守ってくれることを願いつつ、私は帰り道を歩いた。



空にはまだ太陽がキラキラと輝いている。



足元を見ると、道ばたに一輪のスズランが咲いていて、自然と私の顔はほころんだ。



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