「あの!元気なら私、帰りますね。早く帰った方がいいと思います。勝手に声をかけてしまってすみませんでした」



私はそう言って彼から逃げるように立ち去ろうとした。



その瞬間、彼に腕を引っ張られて。



「えっ」



勢いあまって、私は彼の胸の中に飛び込んでしまった。



えぇ〜っ!なにこの小説みたいなシチュエーション!? なんて考えることもせずに、彼の胸元をたたいた。



「は、離してくださいっ」



「ごめん、もう少しこのままでいて……」



「どうしてですか!? 」



赤の他人に抱きしめられていると思った途端に、体がギュッと震え上がった。



どうしよう、怖い……!



早く、早く離して……!!



「ちょっと、めまいが……」



「えっ、大丈夫ですか!? 」



さっきまで思っていた感情は一瞬で小さくなっていった。