「美味しい……!」



アイスが想像以上に美味しくて、思わず笑みがこぼれた。



「やっと笑った」



「え?」



「ずっと、暗そうな顔してたから」



ドキッと心臓が嫌な音をたてた。



忘れてたけれど、今井くんって結構鋭いんだよね。



「え?そうかな……今井くんの気のせいだよ」



何のごまかしにもならないだろうけど、一応そう言っておいた。



「話したくないなら別にいいけど。俺の話は少し聞いてよ」



「うん……」



なんか嫌な予感がする。



胸のあたりがざわざわする感じ。



「あのさ、拓真(たくま)のことなんだけど……」



彼が拓真と言った瞬間、私の世界から音が消えた。



周りの世界はさっきと同じように動いているのに、音だけが何も聞こえない。



何も聞こえない!何も……聞きたくない!



私はバッと立ち上がると、バッグを掴んでお店から出た。



「姫内さん!? 」



「ごめんね、今井くん。でも、私……何も聞きたくないの!」



私は彼にそう捨て台詞を吐いて、勢いよく走り出した。