突っ立ってても仕方がないので、俯き加減で遥琉の席に向かう。
制服を着崩した姿が目立つクラスメイトに囲まれている遥琉のもとへ向かうのは
ライオンの群れにひとりで立ち向かう子やぎの気分だ。
食っちまうぞって聞こえる。
「座れば?」
何が面白いのかわからないけど妙にニヤつきながら頬杖をついてこちらを見上げる遥琉。
そんな彼を瞬時にキッと睨みつける。
「……ほかに場所ないの。ここじゃ……」
「移動するのめんどくさいし」
「はぁ〜?!」
遥琉の口から聞こえた自己中発言に思わず声が大きくなる。
「とにかく、海風は今俺に逆らえる立場じゃないんだからはいはい聞いておけばいいの。いちいち口答えしないで?」
「……貴様」
「え、なになになに!遥琉、ついに路線変更?」
私と遥琉のコソコソとしたやりとりを一部始終見ていた派手なグループのひとりが、
ニヤニヤと遥琉の肩を叩きながらそう聞いてきた。
めんどくせぇ……。
だから教室で遥琉と会うが嫌だったんだよ。