「海風!」

っ?!

私を呼んだその声に、まるでもう癖みたいにドクンと心臓が鳴る。

ムカついているはずなのに、身体はこんなふうに反応する自分に呆れちゃう。

恐る恐る身体の向きを戻して教室の中に再び目線を向ければ、

遥琉が自分の席に座ったままこっちを見ていた。

そのせいで、ほかの人たちの視線も一気にこちらに集まっている。

……やってくれるぜ、有馬 遥琉。

これじゃ、注目しちゃってしょうがないじゃない!

なんていうかもっと、気を使って目立たないように接するとかできないわけ?

私のことを晒し者にでもしたいのかと疑ってしまう。

いやきっと、したいんだろう。

遥琉からしたら、最新機種のスマホを壊した挙句、弁償もできない女だもんね。

でもだからって……。

「早く来ないと、お昼休みなくなるけど」

平然とこちらに向かって声を張る遥琉。

周りの人たちの異様なものを見るかのような目が怖くて、彼へのイライラが変に薄れてしまう。