「……わかったよ、私が壊したって認める」

「なんだ。ちゃんと素直になれるじゃん」

「でも、12万なんて額払えない!うちにお金がないの知ってるでしょ?」

いくらバイトしてるとはいえ、これでもギリギリの状態だ。

うちの両親の離婚が決まった時、遥琉はまだ私と一緒にいた。それなら家庭事情だって知ってるはずだ。

いや、もしかして、忘れてるからこんな無理なこと言い出してきたのかも。

子供の頃、私と過ごした思い出なんて遥琉にとっては簡単に忘れるほどどうでもいいことってこと?

遥琉への不満が沸沸と湧き上がっていると、

「知ってるよ」

先ほどとは打って変わって、穏やかさを含んだような声で遥琉がそう言った。

その声に、不覚にもドキッとして。
変に安心してる自分がいた。

ちゃんと覚えてくれてるんだって。

そんな些細なことに反応する自分の弱さに呆れてしまう。

遥琉にまた心を乱されるなんて嫌なのに。

ってか、知ってるなら尚更、こんな言いがかりつけてきたの意味わからないんだけど。