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「あ〜とっても楽しかった〜!花火の迫力凄かったね!」
「ん。また行こう」
「うんっ」
マンションのエントランスで、幸福のため息をつきながらそう返事をする。
楽しかった花火大会も終わり、遥琉とも今日はもうお別れの時間。
今まで生きてきて1番の誕生日だった。
遥琉がエレベーターのボタンを押してドアが開いて乗り込む。
「あんな特等席であの花火を味わえるなんて。興奮冷めやらぬって感じ。今日眠れないかも」
遥琉パパに感謝だ。
エレベーターのドアが閉まって、動き出した瞬間。
横から手が伸びてきて、そのまま顔を包まれる。
「俺も」
「へっ、」
いきなり遥琉の顔がものすごく近くになって、心臓に悪い。
「……俺も、興奮して寝られないな」
「……っ、」
「ねぇ、海風。そんな格好で誘惑されてたのにもかかわらずいい子にずっと我慢してた俺のこと、褒めてよ」
な、この人はまた何を言っているんだ。
もうお家に着くっていうのに。
「別に誘惑とか……」
「無自覚とか一番タチ悪いな」
「え、ちょ、何言って……」
「いいから、我慢した俺にご褒美ちょうだい」
「な──っ!!」
瞬時に唇が塞がれて、手首を固定される。
いつ人に見られてもおかしくない状況。
こんなところですべきじゃないことはわかっているけれど、
我慢してたのは遥琉だけじゃないと、答えるように、
私もそれを受け入れて。
「……あーあ、そんな顔してこんなところで煽らないでよ」
「……先にしてきたのそっちじゃんっ」
「ん。今日はもう少し付き合ってもらうから」
人のセリフを聞いてるのか聞いてないのかわからないような返事をした遥琉が、
開いたエレベーターのボタンをふたたび押せば扉がまた閉まって。
「遥琉、帰らな──」
「海風は隙がありすぎる。それともわざと?」
「……んっ、」
フッと笑ってキスを落とす彼は──。
「……もうここで襲っちゃうかも」
どんな夜道よりも危険で、
「それはダメ」
世界で一番、愛おしい────。
──end──



