「なに……ここ、」
「せっかくの花火だから。人混みのなかじゃなくて2人きりでゆっくりみたいなって」
そう言ってこちらに顔を向けた遥琉がフワッと笑った。
その笑顔が妙に大人っぽくて。
浴衣だから?夜だから?
眼下に広がるきらびやかな夜景と、月明かりに照らされてキラキラと光る川。
宝石をちりばめたような綺麗な景色がそこには広がっていた。
一本の電灯だけが私たちを優しく照らす。
「綺麗……よくこんなところ知ってたね」
「あぁ。父さんがよく連れてきてくれたんだよね。ちょうど海風と話さなくなった頃ぐらいからかな。男と男の付き合いの時はここだって決まってるみたい」
「へー!そうなんだ〜!いいね、そういうの。なんの話するの?」
「色々だけど、最終的にはいつも決まった話しか」
「決まった話?」
「ん」
「ちょ、」
遥琉は、私の手を引いてそのまま自分の腕の中に私をおさめた。
おでことおでこがくっつきそうな距離でこちらを見る彼が口を開いた。
「俺と海風が生まれた日の話」
「えっ……」



