少し進むと薄暗い茂みの中、細い階段があるのが見えた。
「ここ」
いや不気味だろ。
「えー、ちょっとやめた方がいいって」
「なに海風、怖いの?可愛いね」
「だれも怖いって言ってないでしょ。気味悪いって思うだけ」
「怖いんじゃん」
「あのねー!」
「大丈夫、俺がついてるから」
「ちょ、」
遥琉は、さっきよりもさらに私との距離を詰めて手を握ると、その細い階段を上り始めた。
変な感じ。
遥琉に『俺がついてるから』なんて言われるなんて。
昔は、泣いてる遥琉に私がしょっちゅう言ったセリフなのに。
遥琉にドキドキしてるのか、
歩いたことのない暗闇を進んでることに怖くてドキドキしているのか正直わからない。
後者だったらいいな。悔しいから。
浴衣と下駄で軽く階段は歩きづらくて。
ふたりでゆっくりのぼれば、やっと残り一段が見えた。
「よし、ついた。おいで」
遥琉にさらに手を引っ張られて歩くと。
「……っ!」
目の前に広がる絶景に、言葉を失った。



