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花火が始まるまでの1時間、お店全部を制覇する勢いで屋台を回る。
定番のゲームから、見たことない新しいゲームまで。
最近の露店ってほんと振り幅広いなぁと感心する。
遥琉とわーわー言いながら食べたり遊んだりすれば、あっという間に花火の時間がやってきて。
「そろそろ始まりそう」
遥琉がスマホのロック画面に表示された時間を確認する。
周りの人たちもそわそわし出してて、花火が一番よく見える河原の方へと移動しているみたい。
同じ方向へと向かう人だかりのそれぞれのスピードに、身体が埋れてしまいそうになるけれど、
不安になるたびに、遥琉がギュッと手を握る力を強めてくれて、
本気でエスパーなんじゃないと思う。
っていうか……。
ちょっとまって何かおかしい……。
「遥琉っ!!反対じゃない?!」
みんなが向かう方向とは真逆に向かって進む遥琉に声をかけるけど、
彼は一切こちらを向かずにズンズン歩いていく。
いや、方向音痴すぎるでしょ。
みんなについて行けばいいんだよ?
私の心配をよそに遥琉はどんどん進んで行って。
気がつけば、もう露店が並んでいない人通りの少ない場所にやってきていた。
「何してるの?これじゃ花火見れな──」
「フッ。穴場があるんだよ」
そうドヤ顔でいう遥琉は、さらに進んで茂みの多い場所へと向かった。
「え、ちょ、遥琉待ってよ!」



