「……話を聞いて、パパはママをたくさん傷つけちゃったかもしれないけど、私はママとパパの娘でよかったってちゃんと思えたんだ。パパの見方も変わった。ママがどう思うかは分かんないけど……」
私がこの間のことを話し合える頃には、着付けが完全に終わっていて。
ママは『髪も可愛くしてあげる』と言って鏡越しに私を見てから細い髪に触れた。
「……ちょうど17年前の今日」
ママがゆっくりと優しい声で話す。
「海風が生まれた」
「うん、」
ちゃんと聞かされたことのなかった、私の生まれた日の話。
「立ち会ってたパパ、海風が生まれた時にね、泣きながら言ったのよ、『頑張ってくれてありがとう』って」
ママは当時を懐かしむみたいなに微笑みながら続ける。
「それを言われて、この人と結婚して本当によかったって思ったし、パパと結婚したことにもちろんママだって後悔してないよ。パパがいなかったら海風に会えていないわけだし、そんなの考えたくもない。パパとママがどうなったとしても、海風が私たちふたりの宝物なのは変わらない」
「ママ……」
鼻の奥がツンとする。
今から遥琉と会うんだから、と泣くのを必死に堪えて。
なんだか私、遥琉と付き合うようになって涙もろくなった気がするな。



