少し唇を離せば、海風が力が抜けたような顔でこちらを見つめていて。

ダメだって……その顔。

ゆっくり大事に、海風のペースで。

わかってるけど、だって海風が悪いじゃんそんな顔するからさ。

「……ちょっとごめん、我慢できない」

「へっ、ちょ、」

海風の手を引いてすぐ隣のベッドに横になるように促す。

そのまま、彼女の上に身体を重ねて。

「……みち、る?」

最低だった。
ずっとずっと。

弱い自分を見て見ぬ振りして、
誰かを海風に重ねて触れてきて。

今こうやって、海風に触れる資格がないことも分かっている。

それでも……。

「……ごめん、俺、」

全部ごめん。

なにが、とかそういうレベルの話じゃない。

だけど、もう、しんどい。
我慢できない。

俺はそんなに大人じゃないから。

でも、ほんの少し苦しさがあるのも事実で。