今すぐこの場から消えたい、振り返って立ち去ろうとしたら、松本がさらに俺の手を握る力を強めた。

「今逃げたら、遥琉くん一生変われないよ」

「……っ、」

「ほらっ!」

そう言ってさらにふたりの方へズンズンと進んでいく松本は、自然と俺の手を離した。

「あの、おふたりさん。お取り込み中にごめんね!」

「……へっ、あ、乃々歌ちゃん!いや別にこれは、その!」

見られて明らかに動揺している海風。

慌ててその場から立ち上がろうとした海風の手を、彼女の膝を借りている早乙女伊月が掴まえた。

「ほんと、せっかくふたりきりの甘い時間を過ごしてたのにね〜海風ちゃん」

「なにも甘くないですから。拷問でしかない」

「あ、海風ちゃんそういうプレイの方が好み?」

「……どうやったらそうなるんですか」

呆れた海風がやつから目線を離して天を仰いだ瞬間、その瞳が俺を捉えた。

けど、すぐにそらす。

俺の方から。

なにをどうしたら正解なのかもう全然わかんねぇ。

こっちがなにかしようとするといつもこれだ。

海風の気持ちがわからない。

わかるのが、怖い。

これ以上、嫌われたくないのにきっと嫌われることばかりしかできなくて。

もう離さない、遠慮しない、そう決めたはずなのに。

早乙女伊月が彼女のそばにいるから。
何もかも狂う。