「どうでもいいって……伊月さん、そのことでずっと遥琉のこと気に食わないって思ってたんですよね?」

「まぁ、昨日、海風ちゃんがあいつといるのを見る前まではね」

「えっ……」

「初めてここであった時、俺がデートに誘ってもきっぱり断った海風ちゃんだから、まぁそれなりに自分に似たような真面目な男がタイプで俺みたいな男には興味ないのか〜って思ってたのに、そんな海風ちゃんも結局は女タラシのあいつのことが好きなんだと思うと、ね?」

……ね?
わざとらしい微笑みを向ける伊月さんにまたゾクっとする。

「そっちの方が気に食わないな」

「えっ……」

「なんでみんな有馬遥琉なんだよ。とにかく、海風ちゃんにはガッカリだよ。……そして猛烈に、邪魔したくなった」

グイッ

「へっ、」

突然、伊月さんの長い腕が伸びてきたと思えば、私の手首を捕まえて。

まずい、と思った時にはもう遅くて。

彼との距離はグッと縮んでいた。

少しでも動けば、当たってしまいそうな距離。