伊月さんは私のバイトの先輩であること。
この間、遥琉に女の子を取られたとかで不機嫌だったこと。
遥琉を知ってるか聞かれたこと。
面倒に巻き込まれたくなかった私は知らないと言ってその場から立ち去ったこと。
本当は、面倒に巻き込まれたくないというより、
私の中の複雑な感情が入り混じって「知らない」と答える結果になってしまったのだけれど、
そこはもちろん伏せておいて。
「へーーーー」
「何そのまだなにか疑ってるみたいな相槌」
「別に」
遥琉がそう言ったタイミングで私たちのメニューが運ばれてきた。
正直、今の出来事で若干パンケーキのテンションじゃなくなってしまった。食べるけど。
どうしよう。明日、絶対伊月さんになんか言われちゃうよなぁ。
「っていうか、遥琉こそ、なんか伊月さんのこと見たことあるみたいな反応一瞬してたのになんで知らないフリしたの?」
そうだ。
私が遥琉を知らないって嘘ついたのも悪いかもしれないけど、
遥琉だって、伊月さんの顔をみて「あっ」って確かに言ったのに、あんな風に喧嘩売るみたいな言い方してさ。



