「もう!伊月くん、私のことほっておいてなにずっとしゃべってんの!お手洗い行くって言って全然帰ってこないと思ったら!」
殺伐とした空気の中、伊月さんの後ろからやってきた女の人が、彼の腕をグイッと引っ張った。
「あぁ、ミユちゃん!ごめんごめん!戻るから〜!知り合いに会ってさ」
「え?あっ、どーも。ほら、行くよっ」
女の人は私と目が合うと、興味なさげに軽く会釈してから、すぐに伊月さんを連れて席へと戻って行った。
はぁ……よかった……。
伊月さんの小さくなっていく背中を見つめて、ホッと胸を撫で下ろす。
「俺のこと知らないって嘘ついたってどういうこと?」
「えっ、」
せっかく静かになったと思ったのに、今度はこっちからの攻撃か!
次から次へと……。
私は観念して、遥琉に伊月さんのことを話した。



