「へぇー、なんだ。海風ちゃん、こいつと仲いいんじゃ〜ん。なんで知らないって嘘ついたわけ?」

ひっ。

何かを企むように口元をニッとあげた伊月さんに、背筋が凍る。

ヤバい。

やっぱり覚えてますよねぇ……。

ちゃっかり遥琉の前でそういうこと言っちゃうの、きっとわざとなんだろうけど。

「どーも、遥琉くん」

「あれ。すみません、どこかでお会いしましたっけ?」

へっ?

遥琉さっき、「あっ」って、まるで伊月さんのこと知ってるみたいな反応してなかった?

知ってたわけではないの?

それとも、知っててその態度なの?

遥琉ならどっちもありえそうな気がする。

どうしよう、この状況。

「フッ、人の女奪う男なだけあるわ〜肝据わってんね〜?腹立つ〜」

明らかにイラつきを含んだ伊月さんのセリフに、当の本人は首を傾げている。

嘘でしょ、本当に心当たりない感じ?