「母さんほんと抜けてるよなぁ。卒業アルバムって、俺も海風も持ってるもの同じなんだから今更見る必要ねーのに」
遥琉はそう言いながら部屋の真ん中のローテーブルにおいたロールケーキを一口食べた。
そっか。
そうだよね。
一緒の学校に通っていたのに、ある日を境に全く関わらなくなったから、同じ学校に通っていた事実を私も忘れそうになっていたよ。
遥琉は、小学校のアルバムも、中学校のアルバムも、私のこと、みてくれたのかな、なんてまた余計なこと考えてしまって。
それは、私が、そうだったから。
話さなくなった分、自分が見れない遥琉の顔を唯一見れる方法の一つだったから。
カメラマンも無意識に被写体はいいモデルを選んじゃうのか知らないけど、どっちのアルバムにも、遥琉がめちゃくちゃ写ってる。
全部、楽しそうに笑ってて。
あぁ、私がいなくても、この人はやっぱり生きていけるんだ、楽しいんだって。
落ち込んだこともあったっけ。



