流石に、嫌ですよね。
「そういえばこれ」
バタン、と部屋のドアが閉まったと同時に、遥琉が何やら本棚に置かれた箱の中から何かを取り出した。
遥琉の手のひらの上に乗っていたのは、うさぎの形をしたヘアピン。
「あ、これって……」
懐かしい。
たしかこれ、昔、私が何度もパパにねだって買ってもらったヘアピンだ。
当時すっごく流行ってたキャラクターで、クラスの子たちもみんな持っていたから、どうしても欲しかったやつ。
買ってもらった日から毎日つけていたのを覚えている。
なくなった時はてっきりどこかに落としたもんだと思ってて、随分と落ち込んだっけ。
それがどうして遥琉の部屋に。
「昔、海風がここで遊び疲れてそのまま寝た時に忘れていったんだよ」
「あぁ、なるほど……」
さっきとは違って穏やかな声で説明する遥琉に拍子抜けしてしまう。
あれ、怒ってないの?
っていうか、こんな小さいもの、よく取っておいたな。
こんな子供っぽいヘアピン、今じゃもう使わないし、遥琉のことだから、こういうのなんとも思わず捨てられそうなのに。



