「な、何してっ」
遥琉に手首を掴まれて身動きが取れなくなる。
嫌だ嫌だ、あたしゃ濡れたくないんだよ!
「脱ぐまで離さない。それともずっと離して欲しくない?」
ニヤニヤと嬉しそうに目を細めて笑う遥琉。
「はー?バカじゃないの!」
なんなのよほんと。
腹が立ちながらも、遥琉に掴まれた手首が熱くて、手首の脈から心臓まで全身がドクドクしてる。
「ありえないんだけど……」
私はそう吐きながら、渋々スニーカーと靴下を脱いでデニムパンツの裾を巻いてから素足を砂の上に乗せた。
ほどよく暖かくて、ザラザラとした砂浜。
靴を脱いだだけなのに、ほんの少し別のところに来た気分になる。
「ほら、脱いだから離してよ」
「ん」
聞いてるのか聞いてないのか微妙な返事をした遥琉は、
私の手首から手を離す素振りをまったく見せずに、身体を海の方に向けてふたたび波打ち際に歩き出した。



