みだらなキミと、密室で。


ほんと……何なのよ……。

風がふたたび吹いたのをいいことに、はぁ、というため息をその風に乗せて、仕方なく遥琉のすぐ後ろをついて歩く。

「……約束、守れなかったから」

「え?」

ボソッと、わざと私に聞こえるか聞こえないかの声でしゃべったかのような遥琉に聞き返す。

「毎年恒例だったじゃん。俺んちと海風たちの家族で海でBBQすんの」

「……っ、そうだっけ……」

また昔話を持ち出す遥琉の背中に、あからさまに不機嫌な声のまま答える。

「覚えてるくせに」

そう遥琉が振り返った瞬間、遠くでBBQをしていた家族の子供たちの、楽しそうな声が聞こえてきた。

「……そんな昔のこと、忘れたよ」

嘘。
遥琉に言われて今、明確に思い出した。

『また来年、みんなで来ようね!』

遥琉が、海の家で買ったソフトクリームを頬張りながら私に向かってそう言っていた。

でも、その翌年、遥琉は私の方に一切顔を出さなくなって。
うちの両親の離婚も決まって。

とにかく、みんなでワイワイBBQをするようなムードじゃなかったんだ。

きっと親同士でも色々話していたかもしれないけど。

私にとっては自然消滅って感じ。