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「着いた」
「……」
気持ちいい潮風と、ザーザーと流れる波の音。
えっと……。
状況理解に苦しむ。
「……なんで、海?」
目の前に広がる青い海を見つめながら、遥琉に問う。
遥琉に連れてこられたのは、紛れもない海。
遠くの砂浜では、おそらく家族ぐるみらしい人たちがBBQをしているのが見える。
「やっぱり海かな〜って。……海風だけに」
「……帰っていい?」
得意げにダジャレで返してきた遥琉に冷たい視線を送る。
「ちょ、イライラしすぎだって」
「だって意味わかんないもん。ここで何するって言うのよ。何か用事があるから誘ったんじゃないの?」
そう言いながら、いやこいつなら暇つぶしに私のことを呼び出すかもしれないと思った。
だからってなんでわざわざ海。
「……」
遥琉は私の質問に答えずに、砂浜へと一歩歩き出した。



