「恋ちゃん・・・
宙は余程恋ちゃんが
好きだったんだな・・・」


「・・・?」


「さっき言ったように
あのアパートは宙にとって少ない母親との思い出が詰まった場所なんじゃ
だから・・・
儂でさえ入れては貰えんかった」


そこまで聞くと
堪らず両手で顔を覆った


「友達もアパートには入れたことなかったじゃろ
恋ちゃんは特別な子じゃったんじゃ」


嗚咽しか漏れない口を
閉じることもせず

子供みたいに泣いた


オロオロする庸一郎さんに
“ごめんなさい”を絞り出しながら

涙が枯れるまで・・・








私は・・・

ちゃんと宙に大切にされていた

宙のアパートには
私のタオルもマグカップも歯ブラシだってあった

どれも100均で買ったものだったけれど

確かに私のものだった




あんな風に

離れるしかなかった8年前

あんな風にしか

私への想いを伝えられなかった不器用な宙を想うだけで

胸が苦しい


宙が背中を向けるたび

苦しくて・・・苦しくて・・・

いつしか歪に変化した想い


あれから
雨の日に体調を崩しては

前に進むことを拒んで引き籠った

私にとっての8年間は
やはり辛くて悲しくて長い時間だった

でも・・・


同じように宙も辛かった


やっと
素直に認めることができた