リホちゃんは、四年生五人のリーダー格みたいな女の子。というのも、おじいさんが網元で、おとうさんが漁協のリーダーなんだって。だからその娘もリーダー。

 ちっちゃなコミュニティならでは、だよね。それを最初に聞いたときは、ちょっとびっくりした。カルチャーショックってやつ。“昔々あるとことに”的な世界観が、二十一世紀にも残ってるとは。

 リホちゃんはマセてるところがある。マツモト家で夕食をいただいた翌日、朝いちばん。

「タカハシ先生って、マツモト先生と付き合っとると?」
「はぁっ!?」
「昨日、一緒に歩きよったとば見たって聞いたって、ママが言いよったよ」
「だ、誰がそれ見たの?」
「漁協スーパーのおばちゃん」

 なんでこんな一瞬で噂になってるのよ!? ……って、そっか。昨日はママさんバレーの日だったんだ。

 小さな島の噂の拡散源は、ママさんバレーとパッチワーク教室だ。どっちにも誘われてるんだけど、あたしはまだ余裕がなくて。

「付き合ってないわよ」
「でも、仲よかよね、タカハシ先生とマツモト先生」

 よくないと思うけど? 少なくとも、マツモト先生って超無愛想で、あたしには笑いかけもしないし。

「仕事でわからないことがあるとき、マツモト先生に教えてもらってるだけよ」
「ほんとにそれだけ?」

 リホちゃんは、にまにましてる。生意気で、おマセで、お節介。でも、所見にはそんな書き方できないから。

 “リホちゃんは、とても機転が利いて目配りができます。しっかりしており、クラスのまとめ役です”